ハルカヤマのこと -その2-

 ハルカヤマ・ファイナルカットがいよいよ始まった。オープニングでは、参加作家トークの場面があり「”ハルカヤマとは、何だったか?”」を題目として参加作家一人ずつ話をするなんてコーナーがあったりして、この間、ここに書いたことを含めいろんなことを思い出した。最初に場所決めをして、草刈りが大変だったこともそうだが、ここに出さなければ経験しなかったことが他にもたくさんあり、それは、やはり創作していく上で、自分にとっては、とても大きなことが沢山ある。その一つとして思い出されるのは、初の野外展示だということ。いつものようにバックが白い壁なんかでは、当然無く、バックなんてないということ。「広い空や生い茂る緑、木々の中で、作品をどのように位置づけようか?」という、とても大きな問題。というか立ちはだかる壁。絵をかける場所なんて何処にもなく、たとえあったとしても、自然の中でのフィクションとしての絵画なんて、ただの物体にしかならないだろうと思われた。普段は自然感、生命感なんて抽象的なことを制作の主題としている自分にとって、そんな作品をただ展示したところで、周囲に或る本物の自然のスケールの前では、当然負けてしまう。なにせ周囲は、紛れもない”本物”なんだから、圧倒的にこちらの方がリアリティがある。「では、どうしようか?」と試行錯誤し始めた。2回めの2013年は、スケール感のある作品を創るしかないと思い、とにかく大きな作品を作った。結果明らかに規定のサイズオーバー!当時会場部長だった自分としては反省...(ほんの少し)。そして、更に意識したのは、周りの景観。何本もの太い木々が真っ直ぐに高くそびえ立つ場所を選び、その樹木が空に向かって伸びていく様子と自分の作品がより活きるようにと場所からスケッチをし、制作を行った。ちょうど、この頃に読みはまっていた竹村真一氏の「宇宙樹」という本に、影響されていたこともあって、水のイメージを意識して題材にし始めたのもこの頃であった。そうした経験から徐々に、自然の中で展示する際に自然に対峙するのではなく、むしろ共存できる作品を制作し、空間そのものを構築したいという思いが、より強くなっていったことを記憶している。こういった経験から学べたことは、展示するときにその空間を強く意識するということに尽きる。自分が制作しているものは、たかだか物体だ。だが、その物体とその空間で、けして目には見えない空気そのものを創造できれば....そんなことを夢想している。