エンターティメント

 先日、人生で二度目のサーカスを見た。一度目は幼少期で、薄らとした記憶だが、サーカス団が自分たちの住む町にくるという事自体、一大イベントのような、お祭り的な華やかな印象のみが残っている。そんな頃と比べ、今は他にも娯楽は数多く、メディア的なものに集約され、「サーカス」という響き自体が、何処かノスタルジーを持って感じさせる言葉になっているような気もする。
 サーカスを見てきた日は、よく晴れた夏日。行列に並びテントの中に入る。非日常を演出する『きらきらと輝くラメ入りの幕』『ファンタジックな装飾の数々』『サービスに徹した道化師の所作』が客を招き入れる。会場の中のBGMは、アジア圏のディスコをを彷彿させるような、きな臭いダンスミュージック。演目の数々は、懐かしくも、大げさなマジックショー、死と隣り合わせの空中ブランコや、モーターショー、そして、自然の動物とは思えない、よく訓練されたキリンや象、ライオン等の猛獣使いなど。特に、これは本来自然のなかに存在するはずの動物達がエンターティメントに徹し、華やかなから色とりどりのライトを浴びて、二本足で立ったり、猛獣使いの指示に従って輪をくぐったりする姿は、極めて人工的で、何とも不思議な光景だった。凄く「見せ物的なエンターティメント」。なんだか、ず〜っと忘れていたものを思いださせてくれたような、そんな気にさせられた。
 それはおそらく、「わかりやすい人工的な娯楽」「非日常の演出」、楽しませることを主とした複合的なエンターティメント、そんなものが、今の日常から、あまり残っていないせいかもしれないと、ふと感じた。
 
 直接的には全く関係ないが、そういえばロックなんかも、猥雑な非日常のイメージを振りまく、こんなバンドもあったことをふと思い出した。