奈良美智展

 もう、2週間ほど前になるが横浜美術館で「奈良美智/君や僕に ちょっと似ている」展を見てきた。正直、自分はそれほど熱心なファンという訳ではないのだが、今回の展覧会は生で見たいと強く思った。
 始めて奈良さんの作品を見たのは10数年前。個展「I DON'T MIND IF YOU FORGET ME」だった。当時、村上氏とともにメディアに派手に扱われ始めた時期でもあったし、何となく見に行った。その時も、確か立体、絵画、インスタレーションと幅広い展示構成だったように記憶している。おそらく、最もよく知られた、少しグラフィティっぽいタッチの文字が入ったような作風の作品も多くあったが、いつも雑誌などで見た印象の独特の少女像がカンヴァスに描かれた大きめのタブローも多くあった。そこに描かれた図像を超えて色や形、質感みたいなものが、なぜか、凄く心地よく、見ているのが顔でさえないような不思議な感覚を受けた。よくいわれるような「怖い=かわいい」なんていう感覚とも少し違う気がした。
 今回の展覧会と同時に、今の作品が雑誌の表紙になったり、美術手帖で特集が組まれたりしていた。それを見て、これまでのパブリックイメージと、明らかに異なる印象を感じた。それを確認したくて、見に行った。
 一言でいうと、制作の過程や、手仕事としての手触りが、今までより、見えやすい作品となっていること、そして心地良い質感、温度が感じられる作品だった。特にタブローの「春少女」、未完と書かれた「Cosmic Eyes」この2つの作品は、なんか自分としては描かれた少女の顔が、なんか不思議な仏様のように見えた。