篠山紀信展


 篠山紀信展『写真力』を見に行く。氏の写真展を見に行ったのは、これで二度目。前回は、もうかれこれ20年以上前、確か東京を舞台にしたヌード写真だったと思う。タイトルは、もう忘れてしまったが..。その時の展示で覚えているのは、とにかく写真のスケール感。とても大きく、見るものを圧倒させる力がみなぎっている感じだった。それは、今回の『写真力』も同じ。会場の最初の展示室に入ると、今は亡き、著名人、三島由紀夫大原麗子夏目雅子勝新太郎などの、とても大きなポートレイトのみが暗く広い空間に浮かび上がるように展示されていた。とても大きくプリントされた写真に写るポートレイトは、どの顔も生き生きと、今そこに存在するかのように、手を伸ばすと触れることが出来るような錯覚に陥る。まるで写真であるという前提が見えないように。見えたものが映るのが写真ではあるが、それぞれ被写体となった人物のある一瞬なのだろう。今は亡き人物たちであることが不思議に思うほど、どの写真にも生命が宿っているように感じられた。ここの展示室のタイトルは「GOD」そして、次の展示室のタイトルは、芸能人などのグラビアなど、よく知られた写真も多く並ぶ「STAR」その後、歌舞伎、ディズニーランドなど虚構の舞台をパノラマ写真で見せる「SPECTACLE」人間の肉体にる「BODY」と続く。ここまでは、今まで私たちが目にしてきた、篠山紀信という写真家の代表的とも言える写真の数々。様々な時代を写真家として、鋭いまなざしで切り取り、撮影された写真。そうして生まれたポップアイコンのような写真そのものが時代を創ってきたとも言えるかもしれない。そのどれもが、写真家としての力量を強く感じさせ、見るものを圧倒させるようなものであった。そして、いよいよ最後の展示室。ここのタイトルはとなるのが「ACCIDENTS」ここの展示室の被写体は、著名人芸能人ではなく2011年の震災直後に気仙沼にいた一般の人々。写真としての作風も被写体の人物と一人ずつ対峙して撮られたようなドキュメンタリー。この大きな変化は、やはり震災が大きく影響しているのであろうが、何だか最初の展示室と同じような感覚が感じられた。こちらを真直ぐ見据えた人物は、誰もが、今にも語りだしそうな.声が聞こえてきそうな気配に満ちていた。とても、静かに、ゆっくりと。