y a m i w a h i k a r i n o h a h a

 数日後に知ったレイハラカミ氏の訃報。ただただ、驚き。消え入りそうな程繊細でいて、聞いている人の脳内に音の跡を残すかのような、しっかりとした存在感の不思議な音の織物のような音楽が、もう生まれてこないのかと思うと本当に残念だ。そんな事を思い、昨日から氏の音楽に身を浸していた。i-podで、ずっとかけていると原田郁子フューチャリングの曲が流れていた。後半の曲になって急に耳に入る日本語。原田さんによる詩の朗読。初めて聞いた訳ではないが、何か、この詩には今日初めて自分は出会った感じがした。詩は不思議だ。同じことばでも、自分の中に、するっとことばが入って来るときと通り過ぎていく時がある。この曲は「yamiwahikarinohaha」という。この詩が気になって仕方なく調べてみたところ谷川俊太郎氏の詩であることがわかった。

 ここ数日間、もやもやと模索しながら制作していた。光はぼんやりと感じるけれど霧の中を歩く感じの気分。そんな時に、この詩に出会った。自分が探していたものにことばで輪郭を見せてくれた感じがしたのだ。



闇は光の母


闇がなければ光はなかった
闇は光の母

光がなければ眼はなかった
眼は光の子ども

眼に見えるものが隠している
眼に見えぬもの

人間は母の胎内の闇から生まれ
ふるさとの闇へと帰ってゆく

つかの間の光によって
世界の限りない美しさを知り

こころとからだにひそむ宇宙を
眼が休む夜に夢見る

いつ始まったのか私たちは
誰が始めたのかすべてを

その謎に迫ろうとして眼は
見えぬものを見るすべを探る

ダークマター
眼に見えず耳に聞こえず

しかもずっしりと伝わってくる
重々しい気配のようなもの

そこから今もなお
生まれ続けているものがある

闇は無ではない
闇は私たちを愛している

光を孕み光を育む闇の
その愛を恐れてはならない