ギャラリーにて

UES2011-08-04

 ギャラリー創にて個展二日目の出来事、私は会場にて、静かな午後のひとときをぼんやりと自分の作品を眺めながら過ごしていた。そんな時、ギャラリーへ、美しい一人の若き女性が来場する。会場へ入ってきた時の足取りは何故か、せかせかとした印象を受け、他のお客さんとは明らかに異なる様子であった。中へ入るなりいきなり作品を鑑賞するでもなく、カツカツとヒールの音とともに、私のところへ。
「こんにちは」「見ていただきたいものがあるんですが」「これなんです」大きなバックから黒いプラスチック製のシガレットケースを一回り大きくしたようなサイズのボタンが幾つかついた変わったケースをおもむろに私に差し出した。(ところで、貴方は誰?)
「ちょっとここのボタン押してみて下さい」「ほら」何やらアイシャドウのパレットらしきものが出てきた。「ここも」他の色のパレットが出てくる。「どうですか?」
いったい、なんなんだ?と思いながらも、こう答えた。「まっ、カタチは面白いですよね。化粧品とは思いませんでした」(何よりいきなりそんなもの見せられるとも思わないしね...)
「そうですよね。実はこの化粧品、キャメロン・ディアスも愛用している商品なんです。今なら、これに、このブラシセットを付けて6,500円のところを、たったの1,600円!」「いかがですか!?」
いきなりのギャラリー内、リアル・テレビショッピング...。ただただ、唖然。(キャメロンディアス?....)
「え!?私がですか?」「いや〜、使わないんですけど......」
「プレゼントにも如何でしょうか?」と女性。
「いえいえ、結構です」と私がそう答えると早々と「では、失礼しました」と入ってきた時と同じヒールの音とともに会場を去っていった。

 これは、ちょっと初めての経験。それにしても、ここまでして売らなきゃならないのだろうな。営業できるところなら、こうやって、どこでも入っていくのだろう。ふと我に返り、今の自分と、この営業の女性のやりとりと状況を少し客観的に考えてみる。全く対照的であろうな。この女性から見ると、こんなこと、実際には思ってるかどうか知らないけど、思っても、おかしくない気はするな。
「アートだかなんだか知らんけど、呑気に何してんのかしら?」「わたしは忙しいのよ、これが現実なの」

(大変ご苦労様です。ごめんなさい。でも、私にも現実はありますよ....。)